女子バスケの世界にはコートネームという文化がある。プレー中に名前を呼びやすくするために付けたニックネームのことである。
例えば、東京五輪日本代表キャプテンの高田真希選手のコートネームは「リツ」。林咲希選手のコートネームは「キキ」である。
コートネームのメリットは単に呼びやすいというだけでなく、距離が縮まるという効果も期待できる。
例えば、高田選手は代表チームの最年長でキャプテンで実績もある超一流選手だ。もしコートネームという文化がなければ、代表に入ったばかりの後輩はおそらく彼女のことを「高田さん」と呼ぶだろう。しかし、コートネームがあるので「リツさん」と呼ぶことができるのである。
一方、先輩の方も、もしコートネームがなければ、あまり接点がない選手を呼ぶ際に、どう呼ぶか迷うだろう。しかし、コートネームがあるので、コートネームで呼べばいいのだ。
このような問題は、誰しも職場等で直面しているだろう。だから、女子バスケの世界だけでなく、一般社会でもコートネームを導入すればいいと思うのだ。
ここで、大切なことがある。コートネームは単なるニックネームとは異なるということだ。ニックネームは自然発生的に本人の知らぬ間に付けられることが多い。しかし、コートネームは違う。本人が考えて名付けたり、先輩や同期や恩師などと相談して名付けるのだ。
だから、変な呼び方をされて本人が嫌な思いをしたり、いじめにつながったりするということもないのだ。
コートネームには意味が込められていることが多い。例えば、高田選手の「リツ」というのは「リバウンドをつよく」という意味があるそうだ。林選手の「キキ」には「チームの危機を救える選手になれるように」という意味があるらしい。
女子バスケファンはいろんな選手のコートネーム及びその由来を知っている。例えば、シャンソンVマジックの選手でいうと、千葉歩選手は「シャル」。「スペシャルな選手」が由来だ。佐藤由璃果選手は「キイ」。「勝利への扉を開く鍵(key)」ということだ。
おそらく2022W杯で大ブレイクするであろうトヨタ自動車アンテロープスの平下愛佳選手のコートネームは「ルー」だが、これはルー大柴のファンだからではなく好きな色が青(ブルー)だからルーということらしい。
ちなみに、コートネームは呼びやすさが大切だから2文字が原則だ。だが、3文字の選手も結構いる。名前をそのままコートネームにするパターンの場合に多い。例えば、モニカ、モエコ、マナミなどである。
また、まれにコートネームではなく名前を省略して呼ばれる選手もいる。例えば、代表チームのエース格である赤穂ひまわり選手はWリーグ公式サイトのプロフィールでは「コウ」というコートネームになっているが、代表チームの選手からは「ひま」と呼ばれている。また、東藤なな子選手も公式サイトでは「ヒナ」というコートネームであり、所属チームであるトヨタ紡織の選手たちもそう呼んでいるみたいだが、代表チームでは「なな子」と呼ばれている。
コートネームの由来で一番衝撃を受けたのがシャンソンVマジック小池遥選手のコートネーム「ヒカリ」の由来を知った時だ。小池選手は不動のスタメンPGであり、キャプテンでもあり、チームに欠かせない存在だ。だから、「ヒカリ」というのは「チームに光をもたらす」とか「光輝く選手になれるように」とか、そういう意味があるのだと思っていた。しかし、実際は全く違った。
出身地である新潟の名産品「コシヒカリ」が由来だったのだ。
話はだいぶ逸れたが、コートネームは人間関係を円滑にするということだ。だから、女子バスケ以外の一般社会、特に会社等でもコートネームというシステムを採用しようということだ。