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予備校文化in1998

1998年4月某日、俺は日本武道館にいた。代々木ゼミナール、略して代ゼミの入学式に出席していたのだ。

代ゼミで過ごした1年間は人生で一番充実していたといっても過言ではない。もちろん、精神的にきつかったのは事実だが、目標に向かってひたすら努力するというのはとても楽しいことなのだ。オリンピックの金メダルを目指しているアスリートになったような気分で、全ての時間を合格のために費やしていた。

予備校の全盛期は90年代前半らしいが、俺が代ゼミで過ごした当時もまだ、予備校文化なるものが残っていた。いくつか紹介しておこう。

信者

人気講師には、信者と呼ばれる生徒たちが必ずいた。要するに、その講師を熱狂的に支持する生徒のことだ。

信者は授業の2時間以上も前から教室前の廊下に並んでいたりする。最前列の席を確保するためだ。また、その講師の書いた参考書はレベルに関係なく全て持っていたり、夏季講習や単科講座なども全て受講するのも当たり前だった。

おそらく、信者の合格率は低かっただろう。志望校合格よりも講師を追いかけることに夢中になってしまうからだ。また、どんなに優れた講師でもパーフェクトではないのだ。講師が充実していた当時の代ゼミに通っているなら、複数の講師のいいとこ取りをするべきなのだ。

貢ぎ物

人気講師の授業になると、教卓にはジュースやお菓子などがたくさん並ぶ。貢ぎ物と呼ばれる、生徒からの差し入れである。
中には缶ビールを貢ぐ生徒もいて、授業中にビールを飲みながら講義をする講師もいた。今なら間違いなくネットで大炎上になって講師はクビになるかもしれないが、当時は問題なかった。ほとんどの人はネットを使っていなかったし、コンプライアンスという言葉も世の中に知られていなかったのだ。

モグり

登録していない授業に出席することをモグりという。授業料を支払っていないのに何食わぬ顔で受講しているのだから詐欺罪に当たるかもしれない。しかし、当時、本科生の授業ではモグりが横行していたはずだ。人気講師の授業になると、モグりが多すぎて座席が足りなくなったりするのだ。臨時のパイプ椅子を用意する職員は険しい顔で「次回から受講証チェックを厳しくする」と生徒たちに宣言するが、講師は嬉しそうにモグりの生徒のために前回までの流れを説明してくれたり、以前に配ったプリントを再配布してくれたりするのだ。モグりは人気のバロメーターだったのだろう。

雑談

人気講師は雑談が面白い。どれぐらい面白いかというと、全盛期の爆笑問題浅草キッドより面白い。だから、生徒は雑談目当てで授業に出席するのだ。

当時はネットで炎上ということがあり得ない時代だったから、毒舌や武勇伝で教室を爆笑の渦に巻き込む講師が多かった。おそらく今の時代では当時のような雑談はできないだろう。

もちろん、笑いを取るだけでなくモチベーションを上げるような雑談もある。90分の授業時間のうち70分が雑談だった授業もあった。

雑談は浪人生の精神を安定させるために不可欠な存在だったのだ。

 

以上のような予備校ならではの文化は既になくなっているのかもしれない。今は浪人生の数が減っているし、映像授業が流行っているし、コンプライアンスが強化されているからだ。

だからこそ、かつての予備校文化を全面的に出した予備校を作れば意外と人気が出るかもしれない。